夏・秋にもある花粉症

花粉症にも季節 があります

  カモガヤ ブタクサ・ヨモギ
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花粉症といえば、春のスギ花粉症や秋のキク科の雑草がよく知られていますが、夏にも花粉症があります。おもな原因はイネ科の植物の花粉であるカモガヤハルガヤキク科の花粉であるブタクサヨモギなどです。
また、ダニペットゴキブリなどの通年性アレルゲンやユスリカなどの昆虫アレルゲン空中真菌(カビ)にも注意が必要です。
花粉症に代表される、アレルギー性鼻炎の治療は、アレルゲンの除去と回避、薬物療法、特異的免疫療法、手術療法に分けられます。中でもアレルゲンの除去と回避は、アレルギー性鼻炎の治療の基本とされています。
症状がひどくなる前に適切な診断を受け、原因アレルゲンを除去回避することが重要です。

 

 花粉以外の秋のアレルゲン 意外と知られていない「昆虫」
秋は、ユスリカ、ゴキブリなどの昆虫アレルゲンがもっとも多くなる季節です。死骸が粉状になったものを吸入することにより、ぜんそくやアレルギー性鼻炎が引き起こされることがあります。これらの昆虫アレルゲンは一般にはあまりしられていませんが、重要なアレルゲンです。

 

夏・秋にもある、目鼻のアレルギー様症状
アレルギー様症状が出た人を対象に、厚生労働省が平成15年に行った調査の結果を示します9)。
目鼻症状の出た季節でもっとも多かったのは春でしたが、秋にも全体の15%の人が症状を訴えていることが分かりました。(下図赤い部分)また一年中症状のある人が2割近いました。
「アレルギー性鼻炎」、「花粉症」といえば、冬から春のスギ花粉症、ヒノキ花粉症を連想しますが、秋に症状が出る人や、一年中症状が出る人も少なくないことが分かります。

目鼻のアレルギー様症状があった人の発症時季の割合(複数回答)

夏・秋の花粉症。原因はおもにキク科植物
夏・秋に飛散する花粉として、イネ科植物キク科のブタクサヨモギ、またクワ科のカナムグラがあげられています。とくにキク科の花粉が、秋の花粉症の原因となることがしられています。

  

主な花粉症原因植物の開花時期10)

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 9月~10月の秋期にかけて増加する空中真菌(カビ)

生活環境には多種類の真菌が存在し、様々なアレルギー症状を起こすことが知られています。アレルギー症状の原因となる真菌は大きく分けて、室内外の環境中に存在する空中真菌と、ヒトの皮膚に常在する寄生菌があります1)空中真菌の発生しやすい環境は、(1)高湿、(2)20-30℃の温度、(3)有機物の多い汚れ、(4)長期間利用のない場所、(5)空気の滞留する場所、(6)ホコリの多い場所、(7)結露した場所等があげられます1)。近年、住居の気密性が高くなったために湿度が高くなり、カビが発生しやすい環境となっています。空中真菌の発生時期は、室内外ともに4月から11月で、5-7月の梅雨時期と9-10月の秋期をピークとし、冬期は少ないとされています1,2)。空中真菌の胞子は5μm前後で、多くが下気道まで到達するため気管支喘息、過敏性肺炎などの原因となりますが1)、胞子が大きいアルテルナリアは鼻にも沈着することからアレルギー性鼻炎の原因にもなります1)

 

                          空中真菌の生息場所(生活環境にみる真菌分布)1)より改変

 

こんなアレルゲンに注意しましょう!
 

■■ 季節性 ■■

   
   

カモガヤ*:イネ科
夏の花粉症の代表的な原因アレルゲンです。牧草として全国で広く栽培されているほか、雑草化して道端や河川敷などにも育成します。高さは1m前後です。オーチャードグラスとも呼ばれています。
5月から8月に花粉が飛散します。

    ギョウギシバ:イネ科
他のイネ科植物よりも少し遅れて花粉飛散します。全国の日当たりの良い道端、堤、海辺などに育成します。高さは10cm~30cmです。
6月から8月に花粉が飛散します。
    ハルガヤ*:イネ科
牧草として輸入され、全国の道端に育成します。高さは35cm~45cmです。
4月から7月に花粉が飛散します。
   

ブタクサ*:キク科
道端、空き地、河川敷などに全国に広く分布し、秋の花粉症の原因として代表的な雑草です。とくに南関東で花粉症が増加していると報告されています3)。

   

オオアワガエリ:イネ科植物(花粉)                                                                                       高さは1メートル前後です。牧草として全国で広く栽培されているほか、雑草化して道端や河川敷などにも生えています。5月から8月頃に花粉が飛散します。

   

ヨモギ:キク科
繁殖力が強く、平地から高山まで全国に広く分布しています。ブタクサとならび、秋の花粉症の原因として代表的な雑草です。

   

カナムグラ:クワ科
野原、荒れ地、道端、堤防など全国に広く分布します。花粉症の頻度は高くありませんが、秋の花粉症の原因となります。

   


羽根をおおっている鱗毛(りんもう)や鱗粉(りんぷん)が空中に飛散し、これを吸入することで、ぜんそくやアレルギー性鼻炎を引き起こします。
ガは、室外だけでなく室内にも多くみられます。室内の光に呼び寄せられるガのほかに、穀類や菓子類、衣類に発生する種類のものもあります。ガの鱗粉や粉砕された死骸などがハウスダストの成分となり、これを吸入することでアレルギーが起こります。

   

ユスリカ
吸血する蚊とは異なる種類の蚊です。河川や湖・沼などで発生し、都会の川で蚊柱をつくって大量発生する種もいます。死骸が細かい塵となって舞い上がり、吸入することによりぜんそくやアレルギー性鼻炎を引き起こします。また、ガと同じく、ハウスダスト中にもユスリカの死骸が認められます。

   

アルテルナリア(ススカビ)
湿性環境に多く、木材、空中、土壌などに多く発生します1)。また、クラドスポリウム(クロカビ)と共通抗原性があると報告されています4)。アルテルナリアは、ぜんそく以外にアレルギー性鼻炎を引き起こす菌としても重要とされています1)。

 

■■ 通年性 ■■

   
   

ゴキブリ:室内塵                                                                                                 ゴキブリは暖かく湿度の高い台所、風呂場付近を好み、ビルや飲食店にも生息します。通常は夏に繁殖しますが、熱源のあるところでは、年間を通じて生息します。死骸やフンが細かいチリとなり、アレルギー性鼻炎やぜんそくの原因アレルゲンになります。

   

ダニ:室内塵                                                                                                    ダニは、一般家庭のハウスダスト中に最も多く含まれるアレルゲンです。ぜんそく、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎など、多くのアレルギー性疾患の主な原因になります。ヒョウヒダニ(ヤケヒョウヒダニ,コナヒョウヒダニ)は、ソファー、カーペット、ふとん、ベッドなどに生息し、その糞や死骸がアレルゲンになります。

   

ペット(イヌ・ネコ):室内塵                                                                                           ペット由来の主なアレルゲンはフケです。ペットの飼育を中止するのが一番のアレルゲン対策ですが、飼育する部屋を限定するなども有効です。飼育中止後も、壁や家具などにアレルゲンが付着したまま残っているので、丁寧な掃除が必要です。ペットのフケは衣服などに付着しやすいため、ペットを飼っていなくても学校や職場などにアレルゲンが持ち込まれることもあります。

 *写真提供:「四季の山野草」 URL:http://www.ootk.net/cgi/shiki/shiki.cgi

 

重症化を防ぐには? アレルゲンの除去と回避が重要
アレルギー性鼻炎の治療は、アレルゲンの除去と回避、薬物療法、特異的免疫療法、手術療法に分けられます。中でもアレルゲンの除去と回避は、アレルギー性鼻炎の治療の基本とされています5)。
以下に、「鼻アレルギー診療ガイドライン」に記載されているアレルゲン除去回避の方法をあげます。

 ■室内ダニの除去

  ①

室内の掃除には排気循環式の掃除機を用いる。1回20秒/m2の時間をかけ、             週に2回以上掃除する。

  ②

織物のソファ、カーペット、畳はできるだけやめる。

  ③

ベッドのマット、ふとん、枕にダニを通さないカバーをかける。

  ④

部屋の湿度を50%、室温を20-25℃に保つよう努力する。
 ■スギ花粉の回避

  ①

花粉情報に注意する。

  ②

飛散の多い時は、外出を控える、窓・戸を閉める、外出時にマスク・メガネを使う。

  ③

表面がけばけばした毛織物などのコートの使用は避ける。

  ④

帰宅時、衣服や髪をよく払い入室する。洗顔、うがいをし、鼻をかむ。

  ⑤

掃除を励行する。
 ■ペット(特にネコ)抗原の減量

  ①

できれば飼育を止める。

  ②

屋外で飼い、寝室に入れない。

  ③

ペットとベッドの飼育環境を清潔に保つ。

  ④

床のカーペットをやめ、フローリングにする。

  ⑤

通気をよくし、掃除を励行する。

  

 原因となるアレルゲンを知るには? アレルギー検査「特異的IgE検査」が有効
アレルゲンを除去回避するには、原因となるアレルゲンを知ることが重要です。
自己診断でなく、アレルギー検査を受け、医師による適切な診断を受けることが必要です。
アレルギー検査には様々な種類がありますが、血中のアレルゲン特異的IgE抗体(イムノグロブリンE、略称アイ・ジー・イー)を測定する「特異的IgE検査」は、「鼻アレルギー診療ガイドライン」でも、重要な診断基準のひとつとされています5)。

 

 



花粉症に合併することがある食物アレルギー                                                                         ‘口腔アレルギー症候群(OAS)’
花粉症の患者さんで、果物や野菜を食べて、口・のど・唇のかゆみピリピリ感などのアレルギー症状を起こす人がいます。これは‘口腔アレルギー症候群(OAS)’とよばれ、花粉と食物に存在する共通のアレルゲン(タンパク構造)による、食物アレルギーの一種です。
キク科花粉症の場合、ブタクサ花粉症ではウリ科の果物野菜(メロン、スイカ、キュウリなど)、ヨモギ花粉症ではセリ科の野菜(ニンジン、セロリなど)でOASを起こす人がいることが知られています6)。

口腔アレルギー症候群(OAS)とは
食物を食べたときに、口腔・咽頭粘膜の過敏症状や、その他のアレルギー反応を起こす食物アレルギーです。
食後の多くは15分以内に、口腔・咽頭粘膜・口唇のかゆみ、ピリピリ感、腫れなどの症状が生じます。それ以外にも、下痢・腹痛、鼻水、結膜充血、ジンマシン、湿疹、喘息など、様々な症状を起こすこともあります。放っておくと、アナフィラキシーショックを起こすこともあるため、注意が必要です8)。
食物に単独でアレルギーを起こす場合もありますが、花粉症の人で合併することが多い疾患です。いちばんよく知られているのは、カバノキ科(シラカンバ、ハンノキなど)の花粉症でバラ科食物(リンゴ、モモなど)に対するOASですが、他にも様々な花粉と食物で反応が起こることがわかっています。(右表 :7)より改変)
ブタクサ花粉症はメロンやキュウリ、ヨモギ花粉症はニンジンやセロリに注意が必要です。

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(参考文献)

  1. 高鳥浩介. 生活環境中の真菌とその生態:アレルギー 2005;54;531.
  2. 高鳥美奈子ほか. 最近10年間の相模原地区における空中飛散真菌:アレルギー 1994;43;1.
  3. 岸川禮子ほか. 秋の花粉症の種類と地域差:アレルギー・免疫 2006;13;1230.
  4.  Tee R.D. et al. Cross-reactivity between antigens of fungal extracts studied by RAST inhibition and immunoblot technique:J Allergy Clin immunol 1987;79;627.
  5. 鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症―2005年版(改訂第5版)
  6. 市河三次ほか. 花粉アレルギーと抗原植物―セイタカアワダチソウの謎を追う(黎明書房)1975年初版
  7. 山本美穂ほか. 口腔アレルギー症候群―Oral allergy syndrome―:アレルギー・免疫 2002;9;564.
  8. TemesvariEほか. Contact urticaria from watermelon in a patient with pollen allergy.:Contact Dermatitis 1993;28;185.
  9. 厚生労働省大臣官房集計情報部. 平成15年保健福祉動向調査の概況 アレルギー様症状:厚生労働省ホームページ 
  10. 鼻アレルギー診療ガイドラインー通年性鼻炎と花粉症―2005年版(改訂第5版)